以前私は介護施設の現場で介護士をしていました。
元々腰に持病があった私。
30を過ぎた辺りから身体の不調が増していきます。
椎間板ヘルニアの再発。
しかも3箇所。
それでも、私は気が狂ったかのように、
今思えば馬鹿馬鹿しい使命感みたいなものを持って休養する事なく、治療する事なく、
仕事を続けていました。
毎週整骨院へ行き、夜勤前はブロック注射を
投与してからの出勤。
「明日朝起きたら動けなかったらどうしよう」と変なプレッシャーに襲われ眠れない時もありました。
最終的には注射や飲み薬が効かなくなり息をするだけで下半身に痺れ、痛みが走り動けなくなりました。
何年ぶりかに有給というものを使い、自宅安静に。数日しても改善がなければ、手術をしようと決めていましたが、なんとか痛みが減り、仕事に復帰する事に。
もう介護、現場は無理かなと思っていたら、当時の施設長が
「ノーリフティングケア、抱えない介護」
というものを推進するとの事で外部から講師を招き、法人全体で取り組む事に。
まあ最初は
●機械を使うなんて!!!!
●楽している。機械は暖かみがない。
●利用者の下肢筋力が下がる。
●腰痛は介護士の勲章の証。
みたいな意見が多く
身を削って働く事が美徳となっていた私を含めた、中堅、ベテラン介護士は猛反対。
でも現場の現状は重度の方の移乗やトイレ介助の際はみんな進んでやろうとせず、誰がするのかと人間関係の悪化につながっていました。
よく耳にしたのが
「男性スタッフだからこの人お願い。」
「〇〇さんと一緒にホールに入ると抱えてくれません。1人でしないと行けません。シフトを変えてください。」
ノーリフティングケアとはただ機械を使うだけでなく、
利用者、介護者双方に優しいケアをしましょう
という考えが根本にあります。
無理な抱え上げ、引き上げをする事で起こってしまう双方のデメリットはこのようなものがあります。
○利用者側
①ひきづる事で褥瘡が発生したり、抱えた際
に転倒、転落をさせてしまう。
②抱える事で対象者が筋緊張を誘発し、拘縮、変形が進んでしまう。
これらは
「無理な介護による二次障害」
と言われ、疾患がないのにも関わらず、拘縮がある方は間違った介護をされているからだと言われています。
○介護者側
①腰痛等が悪化し介護ができなくなる。
②人間関係が悪くなる。不適切な発言やケアが、横行してしまう。
③そして離職へ繋がる。
自分より体格が倍もある方をベッドから起こし、車椅子に移ってもらう。これを1人で行う事は、危険で仕方ありません。介護士の精神的、肉体的苦痛は計り知れません。
そんな思い、感情は態度に現れてしまいます。利用者さんは心地の良い生活を送ることはできません。
身体に無理のある介護
↓
不適切なケア
↓
最悪なパターンでは虐待へ繋がることも
↓
職場環境が悪化し離職が増える
負のスパイラルへおちいってしまいます。
導入をして1年が経つと現場の意識も変わってきました。
自然とベッドの高さを変えたり、ボード、シートを使用してのケアが当たり前になってきました。
経験年数がある介護士さんより、新人さんたちの方が普及率が良かったのを感じています。
何より腰痛を訴える職員さんが徐々に減ってきていました。
自分自身は介護を
「単純な作業ではなく、クリエイティブな仕事」だと思えるようになりました。
言い方を変えるとまた好きになる事が出来ました。
そして仕事、働き方への意識も変わりました。
ノーリフティングケアは身体のメカニズム、(関節の動き、体重移動)を知りスムーズで負担のない動きを行いながら、道具、機械を使用します。
ここで実際にノーリフティングケアに取り組まれている法人をご紹介します。
NPO法人 「みらいけあ」
東区花立にあり、ホームホスピスを経営されています。※ホームホスピスについては説明すると長くなるので、省略します。宮崎発祥で詳しくはググってください。
入居者はほぼ重介護が必要な方です。
それでも介護士、ヘルパーさんが日常のケアをほぼ1人で完結できてしまう環境が整っています。
介護士さん、利用者さんに優しい空間でした。
私は
自分みたいに身体を犠牲にして嫌な思いをしながら介護の仕事をして欲しくない。同じ失敗をして欲しくないという思いが強くあります。
そんな動機もあり非力ながら介護スクールで講師をさせていただいております。
そして在宅のケアマネとしてもプランの中にこのノーリフティングケアを取り入れ、少しでも普及できればと思っています。
介護は尊く、クリエイティブな仕事です。
今日もブログが長くなりすいません。最後までお読みいただきありがとうございました。
辻でした。